けやきは知っている

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‐5‐ 1週間後、今度は辻井さんが1人で訪ねて来た。 両親も私も、お巡りさんの訪問に、かなりびくついていた。 何か、私ら家族に不利な情報を持って来たのではないかと。 しかし内容は逆であった。 ウチが疑いから晴れたことを、告げに来てくれたのだった。 「利助さんは、お宅を出た後、公園で行われていた秋祭りに行ったみたいですわ。自転車に乗っている利助さんを目撃した人が二人おりました。 ただその後が判りまへんねやー」 辻井さんのそれを聞いた時、私も両親も不安がふきとんでホッとした。 「そうですかぁ。ウチ出た後、祭り行かはったんや」 父の声は久しぶりに弾んでいた。 私は何げに 「その二人は、利助さんと何か会話したんですか?」 と質問した。 「いやいや、ただ遠めで見ただけで、声はかけなんだ言うとる。 せやけど、いつもの服装やったし、利助さんに間違いはないやろうと。 しかももう祭りは終わりかけで、みんな片付けて帰る所やったらしいし、たいして気にはかけなかった」
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