けやきは知っている

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「で、その後、何処に行ったか解らんようになってもうたんですね」 父が確認した。 「そうです」 完全ではないが、ウチ本中家の疑いは、ここまでの所、一応晴れた訳だが。 「ま、そう言うことなんで」 辻井巡査は敬礼すると、長年愛用してるような年期の入った自転車に乗って去って行った。 あの人は私らが疑われてると病んでいることを考慮してくれて、わざわざ言いに来てくれたのだろう。 「はあ~、疲れたわー」 居間に入ると、父はゴロンと横になった。 「ホンマやなぁ。他に目撃者がおってよかったなぁ」 母もにこやかに、お茶を入れた。 私も(そやな)と思った。 ここからその公園までは、おおよそ1キロくらい。 そこから利助さんのチャリが見つかった河川敷の現場までも、だいたい1キロ。 またその現場から、彼の家までも、やはり1キロといった所だろうか。 もし仮に殺害されたとしたら、利助さんが祭り会場から家に帰宅途中の川沿いで襲われ、殺されたか、または拉致され、のちに殺されたかだろう。
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