けやきは知っている

29/48
前へ
/107ページ
次へ
私は手を上げられたことはないが、特にアルコールが入っていると、短気のスイッチも入りやすくなるようだ。 あの日も父は晩飯時に日本酒をしこたま呑んでいた。 金を借りている相手とは言え、あまりよろしく思ってない利助さんと、酒に酔っている父が、バトルしているさまは容易に想像できる。 法貞おじさんはその場に居たのか。 いや、居たら二人を止めるだろう。 別の部屋にいて、居間からのただならぬ雰囲気を察したおじが、二人を止めに入ろうとした時はすでに遅く、もう動くことのない利助さんが横たわっていた。 「どないしてん!」 と、驚くおじに 「つい、カーっとなってな……」 と、うなだれる父。 しかしそうなってしまった以上、どうすることも出来ない。 選択は2つ。 おじと母は自首をすすめるかもしれないが、父はそれは出来ないと拒む。 となると、犯罪を隠すしかない。 利助さんの死体を前にし、3人は話し合う。 結果、法貞おじさんが利助さんに扮し、そして自分を見せる為に、まだ行われていた祭りに行った。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加