けやきは知っている

30/48
前へ
/107ページ
次へ
「そんなんバレるやろ」 と思われるだろうが、頭をツルツルに剃り、利助さんの服装で、ほっかむりをし、少し背を屈め、自転車に乗っている姿を想像すると、案外間違われるのではないか。 先にものべたが、父と利助さんはよく似ている。 本当は父が扮すれば、より一層信憑性はましたのだろうが、父が頭をツルツルにする訳にはいかない。 それでは後々バレバレになってしまう。 そこで法貞おじさんに白羽の矢がたった。 おじさんもどことなく利助さんと似ている雰囲気はある。 血が繋がっているからだろう。 ただ少し若いが。 しかしアノかっこうをすれば、間違えられても不思議ではない。 顔さえ見せなければ良いのだ。 祭りのさいの目撃者の証言も、遠めで見ただけで会話はしていないと言うことで、それが本人だったかというと確実ではないのだ。 利助さんに扮したおじさんは、祭りで人々に自分を見させておいて、利助さんの家に向かってチャリをこぐ。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加