9人が本棚に入れています
本棚に追加
個室なので回りに患者はいない。
部屋には、驚いた表情で突っ立っている私と、何を叫んでんねんと言う表情の父だけである。
「オレ、お前に言うてへんかったか?」
「い、いや、何も聞いてへん」
「新聞にも載って、テレビでも言うとったで。見てへんか?」
「殺されたって誰に?」
犯人はアンタちゃーうんかい。
「1人息子の金助や。知っとるやろ」
私はコクっと頷いた。
あのいけすかない男の顔を、うっすら思い出した。
「それホンマか」
「ホンマや。ウソついてどないすんねん」
「実の息子が犯人やったんか。それ判ったんいつの話や」
興奮している中に、安心しつつある私がいた。
「あの行方不明騒ぎがあってから3年か?
いや、育男が卒業してからやから4、5年くらいか。いやいや6、7年経ってからかなぁ」
むっちゃアバウトである。
年は覚えてないらしい。
「金助のヤツ、あれからも仕事せんとブラブラしてて、店もやっとったんやけど潰れてもうて、結局、親の利助さんを次いで金貸ししててん。
やけど、まぁ~、取り立てが悪どかったらしいわ。ヤクザみたいなことしよってな、恐喝と暴行で逮捕された。
その時家宅捜索された家の押し入れから、袋に入れられた利助さんの遺体が発見されたそうや」
「マジか!」
叫びに近い声が室内にこだました。
「で?殺害の動機はなんやったん。どういう経緯で殺したん」
最初のコメントを投稿しよう!