けやきは知っている

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個室なので回りに患者はいない。 部屋には、驚いた表情で突っ立っている私と、何を叫んでんねんと言う表情の父だけである。 「オレ、お前に言うてへんかったか?」 「い、いや、何も聞いてへん」 「新聞にも載って、テレビでも言うとったで。見てへんか?」 「殺されたって誰に?」 犯人はアンタちゃーうんかい。 「1人息子の金助や。知っとるやろ」 私はコクっと頷いた。 あのいけすかない男の顔を、うっすら思い出した。 「それホンマか」 「ホンマや。ウソついてどないすんねん」 「実の息子が犯人やったんか。それ判ったんいつの話や」 興奮している中に、安心しつつある私がいた。 「あの行方不明騒ぎがあってから3年か? いや、育男が卒業してからやから4、5年くらいか。いやいや6、7年経ってからかなぁ」 むっちゃアバウトである。 年は覚えてないらしい。 「金助のヤツ、あれからも仕事せんとブラブラしてて、店もやっとったんやけど潰れてもうて、結局、親の利助さんを次いで金貸ししててん。 やけど、まぁ~、取り立てが悪どかったらしいわ。ヤクザみたいなことしよってな、恐喝と暴行で逮捕された。 その時家宅捜索された家の押し入れから、袋に入れられた利助さんの遺体が発見されたそうや」 「マジか!」 叫びに近い声が室内にこだました。 「で?殺害の動機はなんやったん。どういう経緯で殺したん」
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