エクストリームNO・GU・SO

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「民さんからは素晴らしい言葉を教わりました。NO・GU・SO。英語には無い言葉です。この言葉を聞いて、私は子どもの頃に見たニュースを思い出していました。宇宙飛行士用のおむつを付けた女性宇宙飛行士がテキサスからフロリダまでトイレ休憩を挟むことなくハイウェイを飛ばして不倫相手のパートナーを襲撃したという衝撃的な事件です。覚えていらっしゃる方はいるでしょうか。ワイオミング州の山奥で暮らしていた少年の私はこの事件のニュースを見て驚きました。宇宙飛行士用のおむつがあるということ、そして宇宙飛行士はおむつの中に出しているということ」  笑いは漏れなかった。博士がどれほどこの問題と真剣に向き合ってきたか、この会場でそれを知らない人間はいない。 「民さんからNO・GU・SOという言葉を聞いた私はハッとしました。それまでその行為を定義する言葉を持ち合わせていなかったのです。少年の頃、ワイオミング州の山奥で行ったあの、大自然の中で自らを解き放つあの行為。そして、全米から選ばれた身でありながらその解放感を味わえずにおむつの中に出すしか無い宇宙飛行士という悲劇」  過去のニュース映像が新たに用意されたスクリーンに映し出されていた。報道された場面がゆっくりと切り替わっていく。犯罪者となってしまった女性宇宙飛行士の目には黒い線が乗せられていた。 「私は空軍を退役し、医大へと進むことを決心しました。人間にとって切っても切り離せない行為でありながら蔑ろにされてきたあの行為を彩り豊かなものに変えようと考えたのです。宇宙飛行士だけではなく人類にとっての尊厳と自由の問題に直接貢献したいと考えたのです。しかし、その道は平坦ではありませんでした。自由に気ままにどころではありません。医学者となる過程で私は多くの人々が抱える生理的な障害と向き合いました。研究に専念するようになり、社会の中での制約、もちろんそれは衛生の問題と、さらには衛生的な環境を実現するためのインフラとも不可分です、そうした様々な制約の巨大さに打ちのめされそうになりました。そんな時、マイコ・リース監督と出会ったのです。監督は私の研究過程をドキュメンタリー映画として全米で公開しました。皆さんも御存知の映画『UNCO(アンコントロールド・エクスクリーション)』です」  映画の中の印象的な場面がスクリーンに展開された。
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