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「私はエクストリームな競技と言いました。極限状態、そこでのチャレンジにはエンターティンメント性があると信じていたからです。ですから、皆さんも御存知の通り、砂漠や極地帯、ジャングル、山々、水中、そう、水中では魚たちの群れに追われるという素敵な体験もできました。そしてもちろん、宇宙ステーションで、宇宙遊泳の最中に。今日ご覧いただいたようにエベレストでも」
博士は観衆をゆっくりと見渡した。
スクリーンの静止画像が動き始めた。
「この映像は既に二億回も閲覧されています。この動画の中のチャレンジが真にエクストリームなものであることは間違いありません。私が保証します。そしてさらに、私はこの映像を見たから、もちろんそれだけではなく最愛の民さんの故郷である奥秩父を訪れるためでもありますが、この映像がなければこうして火星へと旅立つ前に皆さんの前でお話しすることはなかったはずです。そう、この映像の中のチャレンジの素晴らしさに私は打ちのめされてしまった。脱帽です。多数の人々が行き交うスクランブル交差点で、人々が通り過ぎた後の中心に残された「それ」。信号が変わり目まぐるしく交差するクルマ。踏み潰されることなく、存在し続ける「それ」。やがて再び信号が変わり大波のように押し寄せる人々。その流れを押し分けるように、不思議な力で人々を遠ざけ寄せ付けようともしない「それ」。パーフェクト。アンビリーバブル。ファンタスティック。素晴らしい。素晴らしすぎる。大胆さ、不敵さ。意表を突くタイミングとシチュエーション。エクストリームNO・GU・SOの新しい可能性がここにある」
スクリーンを一心不乱に見つめる博士の目は歓喜に満ちながらも研究者の鋭さを保っていた。
「突如Web上に公開されたこの映像を見て、私は未だたどり着いていない極限がこんな場所にあったのかと感嘆しました。エクストリームNO・GU・SOの可能性は無限だ。その事実を私に知らせてくれたこの映像のチャレンジャーに感謝の言葉を贈りたい。そして、もちろん私は知っている。これは挑戦です。私に対する正面からの挑戦状です」
スクリーンから目を離した博士は目を細め、獲物を狙うような鋭い眼差しを観客に向けた。
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