嵐の夜

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風の抵抗を減らそうと体を竦めて俯きながら歩いていると、規則的なリズムのオレンジ色の光に気がついた。 前方を見ると、路肩に寄せて停まっている車の、ハザードランプの点滅する光が、夜になりかけた町を照らしている。 運転席側のわずかな窓の隙間から、小さな燈赤色の点が覗く。 あれは見覚えがある。 タバコの先の灰を車外に落としてるんだ。 その車の横をすり抜けようとすると、強風の中でもかき消されず強いタバコのニオイが鼻腔を刺激した。 と同時に、男の怒鳴るような声が車の中から聞こえ、思わず視線を車内に向けると、携帯電話で通話している怖そうなおじさんの姿。 男もこちらに気づいて目が合う。 その瞬間、反射的に進行方向に向き直り少し早足になった。
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