3人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃーん!どう?このクッキー!」
「おっ、パックマンにワギャンにマッピー…へーよく出来てるなあ」
「そうでしょ?ね、食べてみて」
彼はパックマンのクッキーを割ると、片方を口に運んだ。
「…うん、おいしい!器用だな、エリカは」
本当は型抜きがあるから特にすごいことはしてないんだけど、そこには触れず、残りの片方のクッキーを食べながら私は言った。
「そんなことないよ、でもおいしくできてよかった。ねぇサトル、今日は何のゲームする?」
私が彼と出会ったのはSNSがきっかけだった。
私と彼は世代も近く、子供の頃にやった懐かしいゲームの話で盛り上がり意気投合。
程なくして付き合うこととなったのだ。
…もっとも、パックマンやマッピーといったゲームは、私達の世代より上の世代で流行ったものだが、私の父親は懐古主義的なところがあり、古いゲームは実家に充実していた。
彼はというと兄の影響で、上の世代のゲームを子供の頃に楽しんでいたらしい。
そういう人って、もしかしたら結構潜在的にいるのかもしれない。
そんなことを思いながら、彼と出会うきっかけを与えてくれた父に私は密かに感謝していた。
彼と付き合いはじめてから約半年。
今では彼が私の家に遊びに来て、一緒にゲームをやるのが二人の間でブームになっていた。
「うーん、なんでもいいけど。最近新しいゲームばっかりやってたし、久々にレトロゲームでもやるか。このクッキー見たらやりたくなってきたよ」
「じゃあ、決まり!」
一人プレイのゲームではどちらかが観戦して、難所を切り抜けられるか盛り上がる。
対戦ゲームではお互い譲らず、勝ったり負けたりを繰り返し、ひとしきりゲームを楽しんだ。
「あ、もうこんな時間か。わり、そろそろ帰るわ」
楽しい時間が過ぎるのは早い。
もう彼の帰る時間となり、対戦ゲームの決着はまた次回へと持ち越されることとなった。
「じゃあ、また来週の日曜ね」
「おう、またな」
照れくさそうに、別れの挨拶をテキトーにやり過ごす彼を見送りながら、私は幸せをかみしめていた。
最初のコメントを投稿しよう!