クッキー(エリカ)

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「じゃーん!どう?このクッキー!」 「おっ、パックマンにワギャンにマッピー…へーよく出来てるなあ」 「そうでしょ?ね、食べてみて」 彼はパックマンのクッキーを割ると、片方を口に運んだ。 「…うん、おいしい!器用だな、エリカは」 本当は型抜きがあるから特にすごいことはしてないんだけど、そこには触れず、残りの片方のクッキーを食べながら私は言った。 「そんなことないよ、でもおいしくできてよかった。ねぇサトル、今日は何のゲームする?」 私が彼と出会ったのはSNSがきっかけだった。 私と彼は世代も近く、子供の頃にやった懐かしいゲームの話で盛り上がり意気投合。 程なくして付き合うこととなったのだ。 …もっとも、パックマンやマッピーといったゲームは、私達の世代より上の世代で流行ったものだが、私の父親は懐古主義的なところがあり、古いゲームは実家に充実していた。 彼はというと兄の影響で、上の世代のゲームを子供の頃に楽しんでいたらしい。 そういう人って、もしかしたら結構潜在的にいるのかもしれない。 そんなことを思いながら、彼と出会うきっかけを与えてくれた父に私は密かに感謝していた。 彼と付き合いはじめてから約半年。 今では彼が私の家に遊びに来て、一緒にゲームをやるのが二人の間でブームになっていた。 「うーん、なんでもいいけど。最近新しいゲームばっかりやってたし、久々にレトロゲームでもやるか。このクッキー見たらやりたくなってきたよ」 「じゃあ、決まり!」 一人プレイのゲームではどちらかが観戦して、難所を切り抜けられるか盛り上がる。 対戦ゲームではお互い譲らず、勝ったり負けたりを繰り返し、ひとしきりゲームを楽しんだ。 「あ、もうこんな時間か。わり、そろそろ帰るわ」 楽しい時間が過ぎるのは早い。 もう彼の帰る時間となり、対戦ゲームの決着はまた次回へと持ち越されることとなった。 「じゃあ、また来週の日曜ね」 「おう、またな」 照れくさそうに、別れの挨拶をテキトーにやり過ごす彼を見送りながら、私は幸せをかみしめていた。
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