代筆者

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 二人には、もう一つの楽しみがあった。月に数回、隣接都市にできた百貨店の切手売り場に足を運ぶことである。販売店員がいるレジを囲むようにしてガラスケースがコの字の型にならんでいる。私たちはそのケースにへばりつくようにして一,二時間切手を眺め尽くすのである。さすがに店員に気兼ねがするので最後には数百円の使用済み切手を数枚購入した。  帰り道、自転車を漕ぎながら、 「いつかは金持ちになって『見返り美人』の切手を買いたいなー」  将来の自分に夢を託すように二人は語り合ったものだ。
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