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◇◇◇◇◇
「またね」
彼女の最期の言葉もこれだった。
連絡を受けて駆け付けた僕を見た彼女は僕の名前を呼んだあと、
「また…ね」
そういって、いつものように微笑んだ。
彼女はどうして最後までこう言ったのか。
彼女と同じくらいには現実主義である僕は、死後の世界なんて信じない。
もちろん彼女も信じていなかったはずだ。
だから、死後の世界で彼女に会えば確かめられるなんて思わない。
病気がわかり、余命が宣告されてからも彼女の言動は変わらなかった。
もちろん最初は動揺し、たくさん悩んでいたようだったが、しばらくして落ち着くと、今まで通りの彼女に戻っていた。
変わったのはただ一つ。
「またね」と必ず言うようになったのはそのころからだった。
それともやはり彼女は変わっていたのだろうか。
彼女にどういう意図があったのか、
どうしてこの言葉にこだわっていたのか、
確かめることは もう、できない。
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