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「死にたくない…」
思わず、彼の前でつぶやいてしまったことがあった。
宣告されて間もないころのことだった。
私はすぐに自分の言ったことを後悔した。
「うん。」
彼はそう言っただけで、何も言わなかった。
彼に言うつもりなんてなかった。
どうにもできないことを言っても、困らせるだけだ。
「ごめんなさい」
こんなこと言ったら困るよね…
そういって謝った私に、彼は「ちがう!」といった。
そして
「‘言霊’って知ってる?」
そういった。
「言葉には魂が宿るっていう…?」
突然何を言うのだろう。
「そう」
「でもそれは…」
口に出すだけで、その言葉が力を持つなんて…と二人で笑いあったはずだ。
訝し気に彼の方を見た。
彼は言いたいことは分かっているというように頷いた。
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