学園刑事物語 電光石火 中編

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 死霊チームの運動能力がなせる技ではあるが、本当に怖い。この死霊チームの子供の持つ、神出鬼没の能力は、誰が教えたわけでもない。だから、全く、制御がない。  階段を降り、家の間を走ると、家の塀や屋根にも子供の顔が見えた。何か、ホラーの世界に迷い込んだようになってしまっている。  軒下にぶら下がった子供、逆さまに木々にぶら下がっている子供、塀の隙間に目、足元に顔。足元? 「うわああ」  足元に顔があって、本気で驚いてしまった。道路にあった、金網のような排水溝の先に顔があったのだ。 「どうしたの?」  今度は、自転車の荷台に子供が乗っていた。 「突然に現れると、驚くよ」  子供は、頷いてにっこりと笑った。笑顔は無邪気すぎて、却って狂気すら感じる。 「印貢先輩は、笑顔だけ、俺たちに向けていて。俺たちは、絶対にその笑顔を消さない」  会話になっていない気もするが、俺に敵意はないと分かる。 「今日は、部活に行くよ。帰りは遅くなる」 「了解」  子供が荷台から消えた。俺が、四区から出る時に、手を振ると幾人かがおどおどと手を振り返してくれた。  こうして、おどおどとしていると、結構可愛い。思わず笑ってしまうと、数人が木から落ちていた。 「あれで、怪我しないのも不思議だ……」  毎回、木や屋根から落ちるが、怪我をしたという話はきかない。  俺が、四区を走り抜け、三区の学校に到着した頃には、既に部活の時間を過ぎていた。急いで教室に入ると荷物を置き、隣の教室の湯沢へ文句を言いに行く。学校は、ベランダで他の教室と繋がっていた。  ベランダを走り、隣の教室の窓から顔を突っ込んで湯沢を探してみたが、姿が見えなかった。窓辺の席の連中に、湯沢の所在を聞いてみたが、まだ見ていないという。  腕の時計を見ると、もうとっくに部活は終わっている時間であった。 「何かあったのかな……」  自分の席に戻ると、隣の席の相澤が深刻そうな顔をしていた。相澤が眠っていないということは、本格的に事件がある。  俺が相澤に話しかけようとすると、担任が来てしまった。  じっと相澤を見ていたが、相澤は正面以外は見ようとしない。これは、相澤が俺を避けているということで、事件は俺に関係している。
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