学園刑事物語 電光石火 中編

14/107
前へ
/107ページ
次へ
 俺が今抱えている問題とすれば、海堂だが、海堂は四区での問題であり、学園刑事である相澤には関係がない。海堂も中学生という年齢であるので、全く、相澤と関係しないのかというとそうでもないが、それではないだろう。相澤は、海堂と俺との関係を知らないので、俺を避ける理由にならない。  では、隣の教室にいなかった湯沢に何かあったのではないのか。俺は、机の影で湯沢にメールを打ってみた。 「…………」  即答のように返事がきていた。湯沢が授業中に、返信する筈がない。タイミングが良かっただけで、メールは海堂であった。  メールを読んでみると、湯沢は誘拐されているとある。  慌てて相澤を見ると、相澤はメールの返信に気が付いていて、俺を睨んでいた。  海堂は、俺だけが欲しいという。でも、四区への復讐もあり、俺と引き換えに盗んだ物は返すと書いてあった。もしかして、湯沢も盗んだものの一つなのであろうか。  俺をどうしたいのか、海堂に質問してみると、特には何もしないとの返答があった。この海堂の行動も矛盾があるように感じる。  俺がため息をついていると、海堂から再びメールが届いていた。  今度は、簡潔に会って話し合いたいという。それは、俺も同じ気持ちだと返答すると、休憩時間になってしまった。  俺が携帯電話をポケットに入れると、立ち上がった相澤が俺を見下ろしていた。俺は、恐る恐る相澤を見た。 「校長室に行く」  相澤に腕を掴まれて、校長室へと向かってしまった。  校長室には、校長以外に佳親も、湯沢の父親も来ていた。他に、刑事と思われる人が、二名同席している。  俺が佳親を見ると、佳親は困ったように頷いていた。  では、やはり、湯沢の姿が見えないのは、湯沢が攫われたということなのか。刑事を見ると、机の上の書類を見ていた。  この刑事の態度からすると、これは、悪い遊びかゲームのように思っていて、事件を馬鹿にしていた。でも、この三区が隣接しているのは、無法地帯の四区であった。どんな事件も、馬鹿にしてはいけない。 「ええと、印貢君だよね。今日は、風邪で部活に行かなかった?」 「いいえ。寝坊で部活に行けませんでした」  湯沢がいなくなったのは、登校時であるのか。いつも俺が一緒に行くのに、今日は、湯沢一人であった。  校長は、椅子に座りながら、刑事の顔色を伺っていた。 「学校に到着して、湯沢君を探していたよね?」
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加