学園刑事物語 電光石火 中編

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「はい。どうして起こしてくれなかったのと、文句を言いに行きました。湯沢君はいませんでした」  刑事はメモしながら、俺に座れと手で椅子を示した。簡易的に入れたのか、パイプ椅子がそこにはあった。 「印貢君は、喧嘩していたり、恨まれている相手はいるのかな?」  この質問には、どう回答したらいいのか分からない。 「喧嘩はしますが、恨まれているレベルはどういった感じでしょうか?まず、どうして俺を呼んだのか教えてください」  どうして俺が呼ばれたのか分かっていない。隣の家で、登下校が一緒というだけならば、佳親までもは呼ばないだろう。 「湯沢さんの家にね、電話が掛かってきた。印貢君となら、湯沢君と引き換えますという内容であった」  それで、湯沢の両親は佳親に相談し、学校に不在の確認をしていた。佳親も、湯沢の両親も、誰が犯人であるのかは分かっている。しかし、四区絡みで表向きは言えないのだ。 「印貢君を、直に誘拐した方が早いのだろうけどね、犯人はどうしてそうしないのだろうね?」   俺には、死霊チームの見張りがついていたからなのであろう。 「相手は、俺に自分の意思で来いと言っているのですね」  俺が行く気でいると、湯沢の父親が首を振っていた。 「弘武君と引き換えなんてできませんよ。だから、警察を呼んだ。犯人を捕まえて、息子を助けてください。俺たちがここにきたのは弘武君が危険だからです」  佳親が、ぐったりと項垂れていた。佳親は、俺の騒動に湯沢が巻き込まれたと思っているのだろう。  俺も、海堂の考えていることは分からない。やはり、海堂に事情を聞かなくてはいけないか。  相澤の姿を探すと、部屋の隅で誰かと話していた。次に刑事の携帯電話が鳴り、緊迫した声が響いていた。まさか、湯沢に何かあったのか。  俺が自分の携帯電話をポケットから出すと、名護から電話が掛かってきていた。 「何かあった?」  刑事の前で、名護と話をしたくないが、何かあったのではないのか。 「有山 優花さんが行方不明です」  それは、俺の彼女の名前であった。 第三章 海の上の空 三  俺の彼女の、優花が行方不明になった。優花は、俺と付き合っていると公言はしているが、恋人などとは言わない。体だけの関係で、満足してしまっていた。
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