学園刑事物語 電光石火 中編

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 俺は、日々、相澤に馬鹿にされているような気もする。でも俺は、年の差もあるので、相澤を尊敬はしていると思う。それに、俺は学園刑事のアルバイトでもあった。相澤は、俺の上司にあたる。  俺、印貢 弘武(おしずみ ひろむ)は高校に通う十六歳、高校一年生。期末試験が済めば夏休みになるが、そんな季節に風邪をひいた。  隣の席の刑事は、相澤 真名斗(あいざわ まなと)二十六歳、俺とは十歳離れている。  放課後、サッカー部の練習に行ったが、あまりにクシャミをしていたので、周囲に感染させるなと家に帰されてしまった。  いつも一緒に帰る湯沢は練習しているので、俺は手で湯沢に合図すると一人で帰途についた。  俺の通う高校は、この近辺では一番の進学校であった。でも公立で、学校の隣には名門の私立一貫校がある。他に国立の大学も二校あり、中学や小学校もある。  この学校ばかりある、天神一区や三区を総称して学園都市と呼んでいた。  高校の最寄り駅は天神一区駅だが、俺は逆方向に向かう。俺の住む天神区は、天神の森駅が徒歩圏内なのだが、この天神一区駅と路線が異なり、乗り換え二回を要する。電車で通学するよりも、自転車の方が早いのだ。  クシャミをしながら自転車を走らせ、天神三区を抜け、四区を通過する。四区から山に向かって長く伸びた階段を登った先が、俺の家であった。この階段から先は、天神区となる。  風邪が酷くなったのか、いつもは走って登階段が、長く感じる。 「あ、倒れそう……」  やっと階段を登り切ると、正面には江戸時代の木造建築がある。黒塗りの古いものだが、むしろ最近はモダンにも感じる。その建築物の上に、久芳漢方薬局という看板があった。  久芳漢方薬局の横に自転車を置くと、俺は店内を覗いてみた。 「季子さん!」  奥で薬の整理をしていた季子が、俺の姿を見つけて歩いてきた。 「どうしたの?風邪?」  希子が俺の額に手を当てて確認していた。 「風邪薬、ありませんか?」 「そうねえ、でも市販薬よりも、お医者さんの処方箋の方が強い薬だから早く治るでしょう。だからね、病院に行きなさい」  確かに早く治したい。 「西新町に抜けて、医者に行ってきます……」  四区に行くなと言った、相澤の気持ちも分かる。俺が四区に行くと、余計な事件を持ってくる。
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