第一章 海の上の空

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 でも表向き兄弟であるので、店では兄さんと季子さんと呼んでいる。  部屋に帰り、着替えていると、 一緒に住んでいる兎の春留(はるる)もクシャミをしていた。 「春留も風邪か?動物病院に行くか?」  でも、よくよく考えると、春留が俺の布団に潜りこみ、 暑くなって毛布をひっくり返したので、俺が風邪をひいたのだ。 その暑かった春留も、風邪をひくというのは、何か可笑しい。 「春留、病院に行くか?注射があるぞ」  春留が部屋の隅に逃げてゆくと、戸の中に隠れてしまった。 春留は言葉が通じるので、注射に反応している。 「ま、春留の前に俺が病院か……」  着替えて外に出ると、季子が車の前で待っていた。
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