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俺が慌てて走ると、季子が心配して寄ってきた。
「弘武君、足がふらついているじゃない。走らなくてもいいよ」
ふらついているのか、足元がふわふわしていた。
「はい。すいません……」
車に乗り込むと、季子は大きな病院に連れて行ってくれた。
「ここって、前に俺が入院した病院ですね」
貨物ではなく、客船の止まる港に面して病院が建っていた。
まるで高級マンションのようで、ガラス貼りのロビーの上には、
コーヒーショップが見えていた。
「そうね。西新町の方は駅前でいいけど、弘武君のカルテはここにあるからね」
三年前、喧嘩で怪我をして、この病院に入院した。
当時の記憶が甦ってきて、通路にはあの日から会っていない海堂の、
流した血の筋が残っている気もした。
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