第一章 海の上の空

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「……座薬はいりません」 「はい、終了ね」  俺は、今日はとことん無視されている。  仕方なく会計に向かうと、椅子にへたりこんでしまった。  座薬はないだろう。 そんなのを見せたら、佳親はバカ受けするに決まっている。  病院は三階まで吹き抜けで、正面は全てガラスであった。 窓には夕暮れの空が、大きく見えていた。 俺は、夕暮れを見てから、目に手を当てて半分眠ってしまった。 「印貢さん」  名前を呼ばれて立ち上がろうとすると、大きな影が前に在った。 正面に人が歩いていたのに、俺は立ち上がろうとしてしまったのか。 慌てて座り直すと、前の人間が立ち止まっていた。
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