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「印貢……さん」
それは俺の名字で、俺を知っているのだろうか。
俺が、立ち止まった人を見上げると、相手の左の横顔に大きな傷を見た。
顔から首、首から下へと怪我が続いている。
すると服の下は見えないが、肩から首を抜け、顎に至るまでの切られた傷なのであろう。
「……今も金色の目ですね」
声は低く、顔がシルエットになってしまいよく見えない。
でも、分かる。
「……海堂、なのか?」
この病院で最後に見てから、そのまま行方不明になっていた海堂がそこに居た。
「あ、会計……」
俺の名前を何度も呼ばれているので、慌てて会計を済ますと、
再び海堂の姿を探した。
海堂は、やや左足を引き摺りながら、病院の外に出る所であった。
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