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「うぎょぉ! なにさらすんじゃボゲェ!」
「チッ、外したか……」
「お前、おっとろしい女やの~。なんや? わしを食うつもりか? これで突き殺してから、わしを食うつもりなんか?」
「いや、なんかイラッと来たんで、とりあえずこれで黙らせようかと」
「悪かった、おっちゃんが悪かった。冷静に話そっ? なっ? 冷静やで」
もとから冷静なんですけどと思いつつ、あたしはさらに気持ちを静めて、ゆっくりと疑問点について質問していくことにした。
「まずはあなたのサイズについて聞きたいの。人間は缶詰の中に入れないはずよ」
「都市伝説や。小さいおじさんって聞いたことないか? それがわしやねん」
あたしはその都市伝説をよくは知らない。なんとなく芸能人が自らを不思議キャラ設定するときに、小さいおじさんなどという与太話をしてたかなって記憶があるだけだ。
「質問その二。小さいおじさんは何で缶詰にされちゃったの?」
「国の陰謀やねん。日本の上層部は地球に小さい種族がいることを知っとんねん。百年以上前からな。そんでわしらを捕まえた場合は、缶詰にするって決まっとんのや」
「ふふっ、なんで缶詰にしなきゃならないのよ……」
「交渉手段に使うためや。わしらの種族にも国があって、まぁ日本政府としては人質を取って有利に交渉したいわけやな。缶詰にしとけば逃げられないし、外の空気に触れないから病気にもならず長期保存できるやろ?」
「いやいや、食べなきゃ死んじゃうでしょ? 空気も吸えないわけだし」
「わしらどっちも必要ないねん」
妖精かっ、おっさんのくせに妖精か! 心の中でツッコミを入れつつ、あたしは妖精的なおっさんの姿を見てみたくなった。
「じゃあ今から外に出してあげる。缶切りの刃に気をつけてね」
あたしは缶切りをガシュガシュいわせながら一周グルッと切り開いた。するとおっさんがふたを持ち上げるようにして、元気よく顔を出す。
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