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柿崎の話はとても面白かった。
もちろん、たかが六年しか生きていない自分の知らないことが、この世界には山のようにあることなど知っていた。けれどその中で、自分に力を与えた「レネゲイド」という存在は彼女の好奇心をかきたてた。まだ見ぬ世界に飛び込みたいという欲求は、他の何物にも変え難く。
「いっしょに行けば、「レネゲイド」のこと、調べたりできる?」
気づけばそう問うていた。家族の驚いた顔も気にしない。
確かに結衣の力ならば、UGNの組織力を借りずとも奇異の目に晒されることなく非オーヴァードの中で生きていくことは可能だろう。ただ、それはひどく退屈な生活になる。彼女の頭脳は並のコンピュータ程度の理解力と解析力を持っていた。うまく能力開発をすればその能力はもっと伸びるであろうし、結衣のあふれる好奇心を満たすにもUGNは格好の場所だと彼は言った。
ただ、もしもUGNへ入るのならば、結衣はこの家からUGNの施設に移ることになる、と言われた。UGNとは本来レネゲイドの存在を秘匿しながら、非オーヴァードと共存の道を探す組織なのだという。この家からUGNの本拠地へ通う、ということはなかなかに難しいのだそうだ。
「彼女の能力は、私達UGNも一目置いています。どうか、承諾してはいただけませんか?」
「たまに、帰ってこられる?」
ずっと離れるのはやはり結衣でも少し寂しかった。いくら、UGNという組織が自分にとってひどく魅力的に見えていたとしても、そのあたりはまだ六つの少女の感性だった。
もちろん、と柿崎は告げた。
けれど、両親の顔は浮かないままだった。断りたいのだろうというのが見て取れた。
すぐに結論を出すのは無理でしょう、と柿崎はそのままこの日は帰っていった。
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