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この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
2013年6月
カナダ、ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは初夏の陽気で各車の集うマシンに陽光がきらめいていた。第7戦 F1カナダグランプリは、波乱の予感を含んでサーキットに詰めかけた観客の興奮を呷っている。
その中心とも言うべき人物は、青と黒を基調としたマシンを操る斉木 怜(サイキ レイ)であったろう。
観客は彼へ課される試練に興奮し、紙一重で回避し続ける神業に喜ぶ。同時にほの暗いトラブルの魔の手が悪魔の微笑みの様に訪れないかと、淡い期待をするのだ。
問えば誰もが、燃え上がるマシンなど見たくはないと言う。だが、どこかで誰もがそんな不幸を待ち続けているのが、まさしくレースだ。
打ちのめされ、命の危険を感じさせられ、果敢に挑んでいくドライバーに観客は魅せられる。まさに、怜はいまその主役であると言えた。
魔物がいたぶるようにレースは最終局面を迎えるまで、彼に障害を与え続けていた。ピットは始終慌ただしく人が右往左往していたが、怜はピットに入らぬまま周回を重ねていく。
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