第1章

47/271
104人が本棚に入れています
本棚に追加
/271ページ
 動物が時折セキュリティに引っかかるとも、初めて来訪した時、屋敷の主は苦笑していた。  警備員の一人がハッとした表情を見せ、もう一人も奇妙に緊張した表情を浮かべる。青年の美貌に気圧される部分も多かったが、屋敷の主人ではない者の来訪に狼狽していた点も少なくはなかったろう。  無言でゲート解除のための生体認証用アイスキャニング機器を渡され、青年は右目に何も言わずかざした。  この屋敷で働く使用人は、話しかけることを禁じられている。完全なプライバシーを保ち、完全なセキュリティを遂行するために厳しいルールが存在していた。  重厚な音が響き、唐草の鉄柵門が電動で開く。青年は何も言わず、機器を返すと車を滑るように運転し始めた。無言で窓を閉じる。  門の内側は手入れの行き届いた青い芝生が、なだらかな丘状に続いていた。その中を一本の舗装した道が続くのみである。しばらくその道を車で疾走すると、そこでまたゲートが目の前に立ちはだかった。  ぐるりと、ただの一本の木もない芝生を取り囲むように高い鉄柵が張り巡らされ、車の進入を防ぐポールが塀に沿って、定期的な間隔で立てられている。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!