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敷地内に入ってゆくと、屋敷に続く石畳を中心として、左右対称に造られた天使の薔薇園には薔薇の花の咲いたアーチがかかり、そこから薔薇園の中に入れるようだった。
「ここから中に入るの?」
「そうだよ。中は迷路だよ。垣根で迷路が造られてるんだよ。今日は迷路で遊ぶ時間はないだろ?」
「そうだね」
僕らは左右対称に造られた天使の薔薇園の外周をぐるりと回って、全ての天使を見た。
結構大きな迷路が中にあるんだろう。思いがけず時間がかかってしまった。
「ありがとう。敬一君。楽しかった」
「僕も楽しかったよ」
「敬一君、電話を貸してくれるとありがたいんだけど。スマホをどこかで失くしちゃって」
「群発地震の影響で海底ケーブルが損傷して、電話が使えないんだ」
「そうなんだ。敬一君のスマホ貸してもらえたら、それでもありがたいんだけど」
「ここはお父様が住んでるだけの島だから、基地局がないんだよ。だから使えない」
「そっか。と、言う事はパソコンでメールもダメって事だよね……」
「うん。パソコンは無いんだ。ごめんね。急いで東京に戻ろう」
敬一君は小走りで車に向かった。
「あ、いいよ!安全運転でお願い!」
僕も後を追う。
★★★
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