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船着き場に着くと船を操縦して、この島まで連れて来てくれた睦月さんが無表情で言う。
「すみません。エンジンが故障して船が出せないんです。しばらく時間がかかりそうです」
こんな時も崩れないんだな。困った顔くらいすればいいのに! 僕は少し苛立った。
「しばらくって、どのくらいですか?」
僕が聞く。
「ちょっと解りません。今日中は無理かも知れません」
えぇーっ……。困ったなぁ。兄さん、絶対心配するよ。
「こんな事になって、ごめんね……」
敬一君が僕に言った。
「いいよ。気にしないで。仕方ないよ」
「本当にごめん。屋敷に行って、食事を作るように言うよ」
「誰に?」
「使用人にだよ」
あぁ。そっか、セレブならいるよね。ヘルパーさん
★★★
屋敷の中に入ると、応接室に通された。
広い……。僕と兄さんの部屋を足してもまだ広い。
それより、玄関にも応接室にも飾ってある不思議な建物の絵は現実のどこかにある建物の絵だろうか。
どんよりと暗い空の下にそびえる、東洋の物とも西洋の物とも言えない奇妙なデザインの大きな建物。見つめていると寒気がする無気味な絵だ。
「敬一君、この絵は?」
「あぁ、この島の先住者が描いていたお城の絵だよ、お父様がとても気に入って飾ってあるんだ」
「へぇ」
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