第1章 エデン

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敬一君の声だ。 「はい」 僕が返事をすると、ドアが開き、敬一君と白衣を着た見知らぬ男性が入って来た。この人が敬一君のお父さんか。 「君が敬一の友達の小林葵君か。話はかねがね聞いてるよ」 「はい……」 僕は立ち上がって、2人を見た。 「まぁ、座りなさい」 敬一君のお父さんが僕に声をかける。 糸のように細い目を持った背の低い陰気な顔付きと声の男性。そんな第一印象だった。 「はい」 僕はソファーにちょこんとお尻を乗せ、浅く座って姿勢を正した。 「敬一が君に迷惑をかけてしまってすまなかったね」 暗い印象だが、肌は血色(けっしょく)が良く、明るく艶やかで、どう見てもハタチそこそこの青年にしか見えない。とてもC学2年生の父親の外見じゃない。 ただ、青年らしく内側から自然と溢れ出るような快活さはなく、内側から感じるのは老人のような枯れた落ち着きだった。 「はい」 僕は不思議に思いながら返事をした。 「敬一も謝りなさい」 「葵君、本当にごめんなさい」 「もういいよ。いくら謝られたって、船が直るのを待つか、外からの救助を待つ事しか誰も出来ないんだから……」 気持ちの余裕の無さから、僕は何だかイヤミな言い方をしてしまった。言ってから後悔する。
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