21人が本棚に入れています
本棚に追加
車を走らせてゆき、屋敷とは反対側にある山のふもと辺りに近付くと、四つ葉だけのクローバーで出来た美しい大地は、突然異様な光景に変わった。
あれは……?
その一帯は、いくつもいくつも深く掘り返された穴があり、土を剥き出しにした荒れた大地が広がっていたのだ。
今まで人を楽しくさせるように設計されたような島が、こんな姿を見せるのを許す事に違和感を感じる。
「何か建設中なの?」
「うん……、あれは……」
「あれは?」
「大きな湖を作る予定なんだ」
「へぇ?」
車が斜面を上がり始める。
山肌に車道を作った為に出来た擁壁は溶岩が固まったみたいな色味と形をしていた。
「ねぇ、敬一君、この壁は溶岩が固まって出来たもの?」
「コンクリートで固めた擁壁だよ。溶岩が固まって出来たものに見えるような着色と造形にしてあるんだよ」
「ただの崖崩れ防止の壁なのに、何だか凝ってるね」
「そうだね。スパはもっと凄いから期待してて」
★★★
「君の家、やる事がハンパじゃないね」
そう言って、僕は敬一君が運転する車から降りるとローマ帝国の遺跡みたいな場所に立った。
半分崩れ落ちた壁、風化したような石畳や柱を見回し、僕は手を伸ばして、近くの壁を触ってみた。
最初のコメントを投稿しよう!