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「ハリボテじゃないもんな……」
「この遺跡を抜けるとスパがあるよ」
敬一君が入浴に必要な物を一つにまとめて入れたバスケットを抱えて車を出た。
「帰りは僕がそれ持つよ」
バスケットを指して僕が言う。
「いいんだよ。君はVIPなんだから。それに、そんなに重くないよ」
「友達をVIP扱いしなくていいよ」
「友達だから、VIPなんだよ」
「へへっ、ありがとう」
僕は素直に嬉しいと思った。
大理石の床の上に巨大な白いパラソルが3つ並ぶ。
左のパラソルの下にはベンチ、真ん中のパラソルの下にはシャワー、右のパラソルの下にはデッキチェアーが2つ置かれている。
「ほら、この先にあるよ。見下ろしてみなよ」
僕は近付いて、驚きに声を上げた。
「うわ! 何コレー!!」
眼下に山の斜面があるのだろうと見下ろすと、何層にも重なる真っ白な棚状の奇岩があり、美しく水が溜められていた。
さらにその棚状の岩に美しく満ちる水は、地熱で温められたお湯なのだと敬一君は言う。
「日本や、バリの棚田に似てるね?」
僕がそう言うと、敬一君が笑って答えた。
「棚田にも似てるけど、これはトルコ西部に位置する世界遺産登録地、パムッカレを真似て作ったものだよ」
「パムッカレ? 帰ったらググるよ! ねぇねぇ、入っていいの?!」
「ふふっ。いいよ」
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