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服はベンチの上に置いておくといいと言われ、3つ並んだ巨大な白いパラソルの内、ひとつの下に置かれたベンチの上に僕は着ていた服を脱ぎ捨て、その隣にあるパラソルの支柱に備え付けられたシャワーで身体を流した。
ん……? 視線? 敬一君のものではない誰かの。
気のせいか。
僕はパムッカレを真似て作ったものにソロソロと近付いてゆき、「そーれ」と声を上げながら、ボチャンと音を立てて飛び込んだ。
燃えているような夕暮れを迎え、幻想的な趣の空へと両手を伸ばした僕は、大きな声を出す。
「解放感スゴーい!! あったかーい!!」
「ただの温かいお湯じゃないよ」
背後から敬一君の声がしたので振り向くと、10メートルくらい離れている、先程の巨大なパラソルの辺りで、カメラを僕に向けている敬一君の姿があった。
「裸の写真まで撮る気なの?!」
「さっきみたいに、空に手を伸ばしてみてよ」
「誰にも見せないでよ?」
敬一君に背を向け、空に手を伸ばすと、カメラのシャッターが切られる音がした。
僕は写真を撮って、中々服を脱がない敬一君に向かって、もうカメラはダメ!と叫んでスパに入るのを急かす。
★★★
なんて美しい所だろう。そう思ったが、先程見た遺跡や化石を掘り起こしている最中みたいに大地が荒れた一帯や、島に上陸してすぐに見た簡素な花火倉庫と言った場所が、美しい景色にこだわっていると思われる島の美意識と矛盾しているように思えた。
島の設計者を始め、敬一君や敬一君のお父さんはそれが気にならないんだろうか? 大きな湖を造るにしたって、その工程をあんな風に見せてしまう事に何にも感じる所はないんだろうか?
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