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「ここで何するの?」
海を見て僕は訊ねる。
「僕の家の船でクルージングしよう。おいでよ」
「え?」
僕はすぐに理解出来なかった。家の船って、どんだけお金持ちなんだよ! しかも船って、あれか?! 客船みたいに大きな船じゃないか!
停泊中の高速船に近付くと船から白い海軍の様な制服を着た美しい容姿の男性が一人出て来た。
「こんにちは、私は井富家の使用人、睦月です」
睦月は表情を変えずそう言うとすぐに船内に引っ込み、どこかに向かった。
「操舵室に行ったんだよ。僕達も乗ろう!」
敬一君が僕の手を引っ張った。
「うん! 僕、船に乗るの初めてだよ」
「これからはいつでも乗れるから」
「いつでも?」
「いつでも。葵君が乗りたい時はいつでも言ってよ」
「敬一君、僕と友達になってくれてありがとう。僕、日本に来て初めて男子の友達が出来て嬉しいんだ」
僕は頬を少し熱くして言った。
「そうなんだ。僕も転校して来たばかりでこんなに仲良く出来る友達が出来て嬉しいよ」
船が動きだし、桟橋を離れてゆく。
「どんなコースなの?」
「東京湾一周と、まぁ、気分で適当に」
「何だよ、適当にって。お坊ちゃんは浮き世離れしてるよね~」
「ふふふ。待ってて、飲み物持ってくるから。オレンジジュースでいい?」
敬一君がどこかへ走って行った。
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