第1章 エデン

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あれ? 鞄の中にスマホがない。 船の中には落ちてない。どこにやったんだろう。それにここは島だ。そもそもスマホが使えるのかどうか。 船着き場に停められた船から降り、桟橋を陸に向かって歩く。 上陸すると、見事な大輪の白い薔薇の咲くアーチを何本もくぐった。 「凄く綺麗に咲いてるね!」 僕は薔薇に見惚れて言った。 「屋敷にも薔薇の咲く庭園があって、綺麗に咲いているよ。夏は薔薇が綺麗に咲かないシーズンなんだけど、この島の薔薇は年中見頃なんだ」 「見たーい!!」 僕はちょっと浮かれているのが自分でも解った。 初めて日本で男子の友達が出来た事と、マイペース過ぎる計画だったけれどサプライズでクルージングに誘ってもらえた事が本当に嬉しかった。 上陸した島を見渡すと2階建てのビルくらいの高さはありそうな白い天使の巨大な彫像が50メートルくらい置きずつ、海岸線の道なりに海を見つめるように何体も並んでいた。 島の中心部には木々の繁った大きな山が一つあり、それ以外は平野に近い状態に見える。 舗装された車道以外の大地には一面、クローバーが育ち、どこまでも続いている。 野暮(やぼ)ったく地面の土が見える様な部分はなく、良く管理された庭園の中に居るようだった。 「敬一君、四つ葉のクローバー探そうよ!」 僕が言うと、敬一君は、ふふっと笑った。今の僕の発言は子供っぽかったのだろうか? 頬が熱くなった。 「よーく、見てみなよ」 敬一君はそう言うと大地に生えているクローバーを選ぶ様子もなく無造作に1本引き抜き、僕に差し出した。 「えっ! 四つ葉のクローバーじゃない! すぐに見つかったの?」 「ふふふっ、葵君も探してみなよ」 image=509066125.jpg
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