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「これ……」
自分の顔がひきつるのを感じる。多分、強張ってる。
記事は宮城野知春のニュースを取り上げていたものだった。
これを知春は読んで切り取ったってこと?
知春は記事にマーカーしていた。自分の言葉のところに線を引いてるみたいだ。全部括弧のところにマーカーがある。
『私には愛している人がいる。その子を自分のものにしたかった』
『いじめられた復讐をしたかった。全く関係ない人は私が愛している人を取ろうとしてたから呼んだ』
『振り向いて欲しいと思っちゃいけないの? いじめりて復讐しようと思っちゃいけないの?』
線を引いてあるところからは狂気しか感じない。
申し訳ないけど、気持ち悪い。
この記事には、知春のみんなへの復讐心と、私への愛憎が詰まっている。
4年間でどれだけその気持ちを増幅させてしまったんだろうか。爆弾を仕掛け、相場を隠され、百々歌を連れてこられた。
知春はもう中学のときの優しく温厚な彼女じゃない。
あのときに、もっと向き合えていれば何か違った未来はあったのだろうか。
あのときに、もっと仲良くなっていれば未来を変えられていたんだろうか。
それはもう今の知春に聞いてもわからないだろう。
タイムマシンがあったら、過去に行って、いくらでも知春の話を聞くのに……。こんな悲しい未来、阻止してやるのに……。
そんなズルい考えも、きっと知春にはバレている。
私は記事を取り出して、チェストダンスの調べを終えた。今度はワードローブのタンスを調べる。
中には洋服が沢山ハンガーに掛けられて入っていた。
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