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「香夜?」
満里が私に声をかけた。動けずにいる私の視線を追うと、彼女は、ヒッとヒステリックな声を上げた。
その声に男子3人も気づく。
この張りつめた空気が私の周りから部屋全体に広がったのが感じられた。
覆面を被った男がテーブルの下から出てきた。
がたいが良い。しかも身長も高い。南条も身長高いけど、それ以上だ。こんなのに殴られたらただじゃ済まされないだろう。
なんで気づかなかったんだろ。
いや、さっきまでテーブルクロスがあったはずだ。この男はわざとテーブルクロスを捲って、私に気づかせたのだろう。
「お前が中野香夜か」
ギロッと私を見つめて聞く覆面の男。
私は答えられなかった。でもこの男はわかってる。
何故なら、この部屋で私は、中野でも香夜でも返事をしているからだ。
斉賀が、私を庇うように前に来た。
「危ないから、僕の後ろにいなよ」
斉賀の心遣いで少し正気を取り戻す。
頭では冷静なのに、身体は全く動かなかったから、助かった。
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