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いくら復讐でも、人の命を弄ぶことはしてほしくない。
睨み付けるように彼を見る。男は無表情で私のこめかみに銃口を充てた。
カチャリと音が頭に響く。音とは裏腹に重くズシリとした凶器だということが感触でわかった。
私は、もう何も言えなかった。これ以上、反抗したらどうなるかくらい私にだってわかった。
怖い。でも、それよりも何もできない自分が悔しくもあった。
「ここに木村はいるか? ……いないな。お前ら、木村を連れてこい。納得しなかったらこの状況を説明してやれ」
男の声が頭から降ってくる。
拳を握る。
知春はもしかしたら、私を一番愛している代わりに一番憎んでもいるのかもしれない。
じゃなきゃ、こんな仕打ちはしないだろう。
木村に申し訳ない。
もう何分、銃口を突きつけられているのだろう。
そう思っていると、木村が来た。固まって行動した方が良いからか、加藤たちもいる。
そして、私の姿を見て、息を飲んでいた。私は、彼らの表情をまともに見られず、俯いた。
黒い凶器が私を人質にする。
悲しいのか、悔しいのか、怖いのか……わからない。
ただ、私の身体は熱く込み上げる気持ちとは裏腹に、震え、冷えきっていた。
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