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母さんが床に置いた雑誌をちらりと見た。
「あら、旅行の計画?」
きみはマジメな顔で答える。
「はい。来年の夏にどこか海外でもと思っています。そのことでおばさんにも相談しようと思っていました。衣川くんは英語が話せるし、ぜひ一緒に行きたいんですけど、いいですよね?」
ぼくらは次の夏休み、一緒に旅行をする約束をしていた。できれば海外旅行。母さんは少し意地悪な顔をしてぼくを見た。
「あら、直哉のインチキ英語で役に立つのかしら。それでもよかったら、こき使ってやってね」
ぼくはきみに目配せをして母さんにきっぱりいう。
「インチキじゃないよ。ちゃんと通じるし。ねえ母さん、ぼくたち大事な話があるから、もういいでしょ。ケーキは後でぼくが取りに行くから、部屋にはもう来ないでよ」
「はいはい、わかりました。ごめんね南澤くん、こんなわがまま相手にいつも大変でしょ。南澤くんみたいなお友達がいてくれて、本当に助かるわ。大学も同じって聞いたときは本当に嬉しかった。おかげでとても安心してるの。来年もどうかよろしくお願いします」
母さんが改まって頭を下げたりする。きみも頭を下げて普段ではありえないくらい饒舌に答えた。
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