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自分のことで精一杯だったぼくは、近藤さんのことをすっかり忘れていた。後ろを振り返り辺りを見渡す。だけど、ラベンダーのふわふわコートの少女はどこにも見当たらなかった。まったくぼくは薄情な先輩である。
「さっきまでぼくのそばにいたんだけど、いなくなってる。ねえ健人。ぼく近藤さんの前なのに、健人と携帯が繋がらないだけで、随分取り乱してしまった。彼女にぼくらの関係が普通じゃないってこと、感付かれたかもしれない。白鳥学院の生徒にも噂が広まるかも……ごめん……」
きみはにっこり笑うと、冷たい指でぼくの両頬を挟む。
「いいよ別に。そうなったらむしろ本望だ。俺にとって一番辛いのは、おまえを失うことなんだから。誰になんといわれようが、なんにも怖くない」
「健人!」
ぼくはまたきみに抱きついた。きみの言葉は、いつだってぼくに安心と勇気をくれる。ぼくはもうきみがいないと生きていけないのだ。
ぼくのポケットでラインの通知音が鳴った。近藤さんからだ。すぐにトーク画面を開いた。
>ママが迎えにきてくれたから
行きます。今日は本当にあり
がとうございました。受験の
結果、また報告しますね!
それから、これプレゼント。
お似合いのカップルですよ。
お幸せに(^з^)-☆
「やられた」
トーク画面を健人に見せた。
「げ。路上キス写真。薄暗くてスクープ誌みたいだな。それ俺にも送って」
ぼくは呑気なきみに呆れて笑ってしまった。
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