味覚の領域

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男はなぜ、この人がその事を知っているのか、、、 わからないと思ったが、すぐに初老の男が答えてくれた。 初老の男「いえ、さっきオーナーさんが、」 オーナー『いやーさっきですね、くそ不味い自作料理を出してきた新入りが居ましてね、あいつ全くセンスも才能もなくて味覚も私達の真逆ですよ!辞めてもらいたいんで、今日中に終わりそうもない量のジャガイモを渡して皮むきさせてます。今日中に終わらなかったらクビにしようと思ってます。』 初老の男「と、言ってたので。」 男「あのくそオーナー!」 初老の男「まぁでも、それでクビはどうかと思いますよと言っておきましたので、クビは無いと思いますけどね。」 男「え、あ、ありがとうございます。」 初老の男「では、今日中に終わらせる必要は無くなったところで、お話聞きましょうか?」 初老の男の言葉を男は素直にありがたいと思い。 そのまま話し出した。 男「実は、、、オーナーに自信作の料理を吐くほど不味いと言われ、次に同じようなものを出せばクビだといわれました。」 初老の男「結局このままだとクビは免れないと、、、」 男「はい、、、でも、確実においしい筈なんです!吐くほど不味いなんてことあり得ないんです!ゆで加減や、具のバランス、材料も完璧と言っていいほどのクオリティだったはずなんです。なのに、、、」 そう男が初老の男に訴えかけると、初老の男は急に近づいてきて、男の耳元で呟いた。 初老の男「逆転の発想ですよ、、、」 男「え?どういう、、、」 男が質問しようとすると初老の男はすたすたと、歩いて行く 初老の男「真実を見る為に時には考えを逆さまにしなきゃならない時もありますよ、、、」 男「、、、わかりました!ちょっと考えてみます!」 初老の男「あと、1つ忠告です。過信や傲り、やり過ぎには注意ですよ。」 男「ありがとうございました。」 男は深々と頭を下げ、その頭をあげる頃には初老の男はすでに居なかった。 男「不思議な人だったなぁ、、、でも、逆転の発想、、、どういうことだろう、、、」 男は考え込みながら、皮むきをこなしていった。 そして閉店時刻、皮むきは終わらなかったが、初老の男が言うように。 クビは無かった。 しかし オーナー「新入り!明日同じもの出したらマジでクビだからな!まぉお前の舌じゃ旨いのは作れないか」
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