味覚の領域

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そう、オーナーに言われ、男はなかば吹っ切れたようにオーナーに言い放った。 男「わかりました!つぎでダメならクビにでもなんでもしてください!でももし、旨い料理を作れたらオーナーが俺に土下座してください!」 まわりに居た他のスタッフやシェフ、オーナーまでも、その男の言葉に目を丸くし、大声で笑い出した。 オーナー「ブァハハハハ!!本気で言ってんのかお前!?わかった、わかった、土下座でもなんでもしてやるよ。旨いもんがつくれたらな!ブァハハハハ!ヒー腹いてぇ。」 オーナーや他のスタッフに笑われながらその日の仕事を終え帰路についた。 男「絶対見返してやる。」 男はやる気に満ち溢れ、寝ずに料理の試作を行った。 そして、ふと、初老の男の言葉を思い出した。 (逆転の発想ですよ。) 男「そうか、いやでも、、、よし!どうせオーナーをうならせなきゃクビなんだ!やってやる!」 次の日 男「おはようございます!」 オーナー「元気だけは良いみたいだな。よし、出してみろお前のクソ不味い料理を!ブァハハハハ」 男(笑ってられるのも今のうちだ!) 男は気合いを入れ、料理に取りかかった。 30分後 男「お待たせしました!どうぞ。クリームチーズパスタのジェノベーゼあえ改です!」 オーナー「なんだこれ、この間と同じもんじゃねぇか。なめてんのか?」 男「いいえ、この間とは比べ物にならないほど、変わっているはずです。一口食べてみればわかります。」 オーナー(なんだこの自信、ホントに見た目は前回と全く同じだ、同じってことはそこまで変わるわけもない、まぁいい、一口食ってこいつはクビだ。) オーナーは考えていることを口にせず、フォークで少しパスタを取り、一口、口に運んだ。 オーナー「こ、これは!!!なんでだ!こんなことが!お、おい!お前食ってみろ!」 オーナーは動揺を隠せぬまま、他のシェフにも一口食べるよう促した。 シェフ「わかりました、では、一口。」 シェフは一口食べた瞬間涙を流し始めた。 シェフ「こ、こんな料理食べたことがない!旨すぎる!」
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