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それから私は彼と軋むベンチに座りながら他愛もない話をいくつもした。
そこにはカガヤキイに関する話題なんかひとつもない。
私は目の前の彼のことを知りたかった。
だからくだらない話をひたすら続けた。
子供の頃のおかしな話、この前見たテレビの話、買い物に行くとたまにいる失礼な客ーー。
「髪の色、何で青に染めてるの?」
「そうだなあ....青ってどこか哀しい色だから」
「哀しい色なのに、どうして」
「自分からそういう風にしていれば、嫌なことが少しでも寄ってこない気がして....」
なんて。本当のことはカガヤに聞かないと分からないけどね。そう言うと優しく笑った。
彼は何処か特別な雰囲気を持っていた。
それこそ流石トップアイドルの役割を果たしている人だなと思わせる何かを持っていてその感覚を何処かで感じる度に私は胸の奥に何とも言えない気持ちを抱いていた。
「ロシコは色々な事を知ってるんだね」
「そうかな?」
「そうだよ。ロシコと話してると時間が経つのがこんなに早い」
彼はそう言うと腕時計を私の方に見せながら指差す。
「本当だ。そろそろ行かないとね」
重い腰を持ち上げて立ち上がろうとしたその時ー、腕を掴まれたのが分かった。
「どうして影武者やってるのかって、聞かないの?」
風が吹く。青色の髪がさらさらと揺れる。
コテアイロンで雑に巻いてきた私の髪の毛も、揺れる。
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