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唇が乾くのが分かった。
口にしても良いのだろうか。言葉にしても良いのだろうか。
喉元まで出かかった感覚を絞り出そうとしたけれどーー、私はそれを瞬時に停止することにした。
「聞かないよ」
「どうして?」
「聞いて欲しいの?」
「....ロシコはさ、自分のことが好き?」
どうすれば良いのか、何を言えば良いのか、分からなく困惑した脳内は勝手に「....自分の名前は嫌いだよ。 幻に子って書いて、げんこって読むの。本当はね」だなんて、自己紹介を始めた。らしくない。けれど彼はそんなこと気にも止めずに そうかな。とても良い名前だよ、ロシコ。と言った。
「俺はね 自分が大嫌いだよ」
弱くて一人じゃ何にも出来ないこんな自分が大嫌いで、ほんと、どうしようもないね。
私の腕を掴んだままそう言う彼のその姿は、今にも消えてしまいそうだった。
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