shine

1.

数時間前ーー。

”今日のキイ君のライブ、行けなくなっちゃったの”

幼馴染の今にも泣き出しそうなその声を聞いて断れなかったのが運のツキ。
大好きな”カガヤ キイ”君とやらのアイドルのライブチケットをアリーナ中央付近の席で当選したと跳ね飛びながら喜んでいた幼馴染。

しかしライブ当日である今日の朝、まさかの感染型胃腸炎にかかってしまったらしく、けれど大好きなキイ君とやらのライブに空席を作りたくないからと私が代役を頼まれてしまったのである。

「余裕持って出て来たのは良いけど、開演までまだ結構時間あるな....」

お金はいらないから！代わりに行くだけで良いから！お願い！ロシコちゃんしか頼れる人がいないの！
だなんて言われちゃったら、いやお金はちゃんと払うよ。だからそんなに頭下げないで。気にすんなって。って、そりゃあ言ってしまいますよ。
それに私はロシコじゃなくて、幻子(げんこ)だっての。

ーー幻子(まぼろしこ)ちゃんって言うの？スゴく素敵な名前！ねえ、ロシコちゃんって呼んでも良いかな！？

何処か抜けている幼馴染との初対面の出来事を、ふと思い出す。