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「わ!?」
寒さをしのぐために下向きに視線をやり歩いていたからか、前から来るその人影に気付かなかった。
瞬間、低い声と共に重い音が響いて自分が人にぶつかったのだということを認識する。
それと同時に目の前からは甘い香り。
黒いキャップ帽子が、地面にはらりと落ちた。
「すみません!よそ見してて、これどうーー、ぞ」
「あ。すみませんありがとうございま....」
黒いキャップ帽子を拾って渡す。
目の前でそれを受け取りそう答える低い声を耳にしながら、私はそれなりに驚いた顔をしていたに違いない。
「カガヤ、キイ....?」
「....あ」
きらきらと光るその綺麗瞳はまるで吸い込まれそうなくらいに透き通っていて、私はそれを見て思わず宝石みたいだなと、何とも想像力の乏しい感想を考えてしまったのだろう。
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