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ノートを肩から下げているショルダーバッグに入れ、二三は少女に声をかける。
「幸! 幸ちゃん」
二三の問いかけに少女は顔を上げ二三を見上げた。
その時、倉庫の中の物資や家の中の使える物をトラックに運び入れる作業を指揮していた、指揮官が声をかけて来る。
「何か分かったかい?」
「はい。
この男性と幸ちゃんは、1年近く一緒に暮らしていたようです」
「幸ちゃん、って何?」
「この子の名前です」
「あ、そう、で、どうするのだ?」
「連れて帰ります」
「分かった。
それじゃすまないが、彼女、じゃなくて、幸ちゃんを遺体から離してくれないか。
庭に墓穴を掘ったから」
話しながら指揮官は家の方を指差した。
「幸ちゃん!」
二三は少女に声をかけその身体を抱き上げる。
男性の遺体が埋葬され、名前が書かれた墓標が立てられた。
二三は墓に手を合わせ、その後指揮官に声をかける。
「僕は彼女を連れて先に帰隊します」
「了解。
俺達は倉庫の中の物を積み込み終わってから、本隊に合流する」
二三は自分が乗ってきた四輪駆動車の助手席に、少女を座らせた。
車を発進させようとした時、男性が埋葬された墓を見続けていた幸が声を上げる。
「アがぁ」
その声は、「またね」と言っているように二三には聞こえた。
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