第1章

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△年3月〇日 変なゾンビ、否、少女を見つけた。 彼女は私の姿を見ても近寄って来ず、何かを訴えるように私を見ているだけ。 見える範囲でだが、彼女の薄汚れたパジャマや露出している身体の何処にも噛まれた跡が見当たらない。 輸血などで感染した最初期のゾンビなのだろうか。 △年4月〇日 昨日と同じところに少女はいた。 今日も何かを訴えるように私をジッと見つめている。 △年4月〇日 今日もいる。 私は彼女に興味を持ち、噛まれても大丈夫なようにセーターやジャンバーそれに手袋を何枚も重ね着してから、彼女を手招きした。 彼女は私に近寄ると、両手で大事そうに持ったスマホを私に差し出して来た。 スマホからイヤホンが伸び、彼女の両耳を塞いでいる。 スマホを受け取り画面を見るが電池は遠の昔に切れていた。 私は手動発電が出来る防災ラジオで充電してやり、画面をタッチしてからスマホを彼女に返す。 彼女は何処か嬉しそうな顔を私に向けてから、道端に座り込み音楽を聴き始めた。 △年4月〇日 彼女は今日もまた家の前の路上に座り込み音楽を聴いている。 そしてスマホの電池が切れる度に私にスマホを差し出し、充電をねだる。
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