第1章

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△年5月〇日 彼女の薄汚れた身体やパジャマを何とかしてあげたい。 私は意を決して彼女を家に入れた。 彼女に噛まれたらそれはそれで仕方が無いことだと思ったが、彼女は私を食べようとはしなかった。 パジャマを脱がせ身体や頭をお湯で洗い、倉庫で見つけた服を着せる。 △年6月〇日 彼女に幸と名付けた。 幸と何度も繰り返し呼びかけたら、顔を上げ私を見るようになった。 △年7月〇日 幸が我が家に来てから生活が充実している。 私達夫婦は子供に恵まれなかった。 でも、子供がいて孫がいたらこういう幸せな生活が出来たのかも知れない。 △年10月〇日 今日私は目眩がして倒れてしまった。 そういえば高血圧の薬が無くなり飲まなくなってから、どれくらい経つだろう。 私が死んだら、スマホに充電してあげる事が出来なくなる。 幸にスマホの充電のやり方を教えよう。 そうすれば私が死んだ後も、音楽を聴き続ける事が出来る。 ☆年1月〇日 幸に充電のやり方とスマホの操作を教えたら、1人で出来るようになった。 最近では居間のソファーに座り込み、1日中音楽を聴いている。 少し寂しい。 ノートは此処で終わっていた。
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