第二章 卒業

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そんな皆が必死になっていた最中、ようやく家族から解放され、 自由に本が読めると思っていたが、全くそれどころではなかった。  大学に入ってぼんやりしていた初めて話しかけてきたのは、ほのかという北海道から出てきた女の子だった。同級生でほっぺが赤く、くりくりとした目が印象的だった。 彼女は北海道から東京にきて、まだ一週間しかたたないという。  彼女も私と同じで、大学でもらった書類を胸に抱えていた。 その姿を見てもしかしたら・・・ 彼女となら親友になれるような・・・ そんな気がした。  すると、彼女は「一緒に講義聞きに行きませんか?」と、 にこっとした顔で私の前に現れた。 その笑顔を見たとき、 こんな風に私に笑いかけてくれる人がいるんだと思い、 初めて何故か救われたようなそんな気がして、 気が付いたら私もにこっと笑い返していた。 そこから、私たちの友情は始まった。 「なんであの時、暗そうな私に話しかけたの?」と後日聞いたら、 「黒縁眼鏡をかけて、下を向いて誰にでも愛想笑いしかできないアンタには 何故か分からないけど、私しか友達になれないと思った。」 と笑いながら言われた。  ほのかも私と同じ考えだったんだと思うと、出会えて本当によかったなと思う。 あの当時、私は東京生まれで誰よりも都会出身のはずなのに、 一番あか抜けていなかったし、一番ダサかったと自分でも思う。 彼女が話しかけてくれなければ、 私はもしかしたら未だに誰とも目を合わせられず、生きていたかも・・・ そんな風に考えると恐ろしい。
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