のりたまこ

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朝。 ご飯の炊けるいい匂いが鼻を掠め、目が覚める。 空腹を訴えるかのように腹が鳴ると、隣で寝ていた筈の友人がいない。 上半身を起こすと、「あ、起きたか? 飯にする?」と小さなキッチンから顔を出した。 すんごいケチな奴なのに、一応、朝飯は御馳走してくれるのかと感動しそうになったが、考えてみれば、インスタントご飯や水を買ってやったんだ。 そのぐらいのことはしてくれても罰は当たらないと思い直し、「ありがとう」と一応、感謝の言葉を言ってキッチンへと入る。 そこには、いかにも出がらしといった、最早、麦茶というよりも、うっすら色のついた水と、炊き立てのご飯、そして、既に開封された「のりたまこ」が用意されていた。 善意で出されたものに対して文句を言うのは失礼だとは思ったが、思わず、「これだけ?」と漏らすと、友人は別に気にした様子もなく、「うん。そうだよ。昨日買って貰ったチンするご飯でも良かったんだけど、せっかくお前が泊まってくれたんだし。炊き立ての美味しいご飯でも食べて貰おうかと思って、準備してたんだぜ?」と、逆に得意満面。 まぁ確かに。 世の中には飢餓で苦しんでいる人もいる。 お米が食べられるだけでも幸せだと感じられるコイツの方が心は豊なのかもしれない。 なんていうことを思い、小さなテーブルに二人、対面になって座る。 まだ寝ぼけた頭でいるものの、既に、「のりたまこ」をかけてご飯を食べ始めている彼に倣い、「のりたまこ」をふんわりツヤツヤな白いご飯の上にかけた。
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