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「そっか、元カレだったのか…」
「うん、なんか当時は素敵に思えたのに、
久々に会ったら散々だったな」
時間はたっぷり有ったので、
事細かに伝えた。
コンパで知り合い、
一目惚れだと告白され、
付き合い出した途端、
同棲中の彼女がいると分かったのだと。
『芹香と彼女の間で迷ってる』
『やっぱり長年の付き合いだから、
彼女とは別れられない』
その言葉を信じて身を引いたけど、
女子大生とデキ婚したことからも、
たぶん複数の女性と同時交際することに
抵抗を感じない人なのだろうと。
昂さんは笑って言った。
「あの男、バカだよな。
調子に乗って、結局は報いを受けてるし」
「…報い?」
「だってそうだろう?
好きでもない女と結婚するんだぞ。
こんな拷問、無いって」
「…そっか、そうかもね」
圭くんの本心は分からないけど。
でも、家に帰りたくなさそうなのは、
すごく伝わってきた。
これから彼は、
愛していない女性と一緒に過ごすのだ。
そしてきっとバレないように、
浮気を繰り返すのだろう。
それはなんて虚しくて、
それはなんて孤独な行為だろうか。
「本気で生きないと、そうなるんだ。
適当に流されて生きていると、そうなる。
必死になって、もがいて生きると、
俺みたいに芹香を掴むことが出来る。
頑張った自分と、神様に感謝だな」
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