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そのまま昂さんは、
このホテルの近くにある整体院で
マッサージを受けて来ると言い。
私は私で、由布ちゃんの披露宴に向かう。
「じゃあ、芹香。
終ったら電話してくれ、迎えに来るから」
「はあい」
…ほんとにあの人は。
最近、寂しがり屋で困る。
こんなことで、父親になったら
どうするつもりなんだろうか。
子供と2人で私を奪い合うんじゃない?
「…ねえ、甘えん坊なパパだよねえ」
お腹をさすりながら、私は囁く。
まだそんなに目立たないけど、
これで3カ月に入ったところなのだと。
それが分かったのが一昨日のことで、
まだ兄や両親にも報告していない。
きっと大喜びしてくれるだろうな。
ブブブとスマホが震えた。
見ると昂さんからLINEメッセージで、
こう書かれている。
>ゴメン!もう我慢出来なくて、
>西村さんと華子ちゃんに妊娠報告した。
安定期まで待てと言ったのに。
浮かれすぎだよ、もう。
怒っていますという意味の
スタンプを送信し、
それから披露宴会場に入り、
うっとりと微笑む。
ああ、どうしよう。
とんでもなく幸せだ。
妊娠を伝えたときの彼の顔。
『生きてて良かった』と昂さんは言った。
『ありがとう』と昂さんは言った。
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